iOS9に纏わるフォントのお話

iPhone 6s/6s Plus が発売され、初動売り上げがまたも過去最多らしいですね。
そんな中、iPhoneの裏側(思いっきり表側)で、もうひとつ新たに動き出したものがあります。そう「iOS9」です。
今回のアップグレードは、見た目にも感覚にもそれほど大幅な変更点が無いため、iPhoneの新機能 “3D Touch” や “4K” などの話題に埋もれてしまっておりますが、個人的にiOS9を象徴するものといえば「フォントの変更」だと思います。多くの方はそれほど気にならないかも知れませんし、気付かれたとしても「あれ?何か様子が変だぞ…」「んんっ?何か変わった?」と思う程度かも知れません。

普段深く考えることの無いこの “フォント” の世界、ちょっとだけ覗いてみていってください。
要点だけ押さえ、簡単な説明を加え、簡潔に変更点を書き出してみたいと思います。

 

||| 「Helvetica Neue」から「San Francisco」へ

遡ること2013年09月、AppleはiOS7のリリースに伴い「Helvetica Neue」というフォントを採用しました。皆さんが “フラットデザイン!?アイコンが平面的になって、フォントが細~くなったぞ!” と記憶しているあの頃のことです。この「Helvetica」はとても有名なフォントで、世界でも多くの公共機関や企業ロゴにも使用されています。
代表的なところでは「Microsoft」「Panasonic」「TOYOTA」「SAMSUNG」「MUJI」「Francfranc」「evian」のロゴ等々、言い出したらキリがありません。視認性が良く、クセが無く、親しみ易い…フォントにとってとても重要な要素を数多く含んでいる、フォントの中でも代表的なフォントです。
ちなみに弊社OP+USのロゴやシステムツールも、このHelvetica(ファミリー)を採用しています。

※有料フォントになりますので、ご興味のある方はこちらなど幾つかのサイトから購入が可能です。

そんな有名なフォントHelveticaが、なぜこんなにも早い段階(2年)で変更されてしまったのでしょうか。
その要因は Apple Watch の登場です。実はHelveticaにも弱点があります。それは「極めて小さくなると視認性が若干悪くなる」ということ。決して視認性が悪くなるわけではありません。あくまで “極めて” と “若干” を強調して付け足したい。
しかしAppleはこの僅かな視認性の悪ささえも黙って見過ごすことは無かった。この判断は常に最高のソリューションを提供するAppleからすれば当たり前のことだったのかも知れません。

Apple Watch のような小さなディスプレイに表示しても視認性が良く、Helvetica が持つ利点も全てカバーできるフォントは無いだろうか…
そこで白羽の矢が立ったのが、今回のiOS9に採用された「San Francisco」(下図参照)というフォントです。

 

sanfrancisco_font_typeface

▲San Francisco

 

||| San Francisco フォントとはどんなフォントなの?

では、Helveticaに変わって採用されたフォント「San Francisco」とは、どのようなフォントなのでしょうか。
実は “San Francisco” というフォントは、これまで世間には存在しませんでした。即ちAppleが独自に開発したフォントとなります。ドイツ語フォントの「DIN」が原型と言われています。Apple初となるこのオリジナルフォントは、ゆったりとした間隔、繊細なカーブ、小さくなっても視認性を良くするための工夫が細部にまで行き届いており、素晴らしい仕上がりになっています。
Helvetica よりも San Francisco のほうが、字体がシャープで、字間にもゆとりがあり、視認性が良いことが伺えます(下図参照)。そして今回 San Francisco が、Apple Watch だけでなく iOS や Mac OS にも採用される形となったのには様々な理由があると思われます。

sf_hn_din

▲ San Francisco(左), Helvetica Neue(中央), DIN(右)

 

||| San Francisco は1種類ではない!?

Apple Watch だけでなく iOS や Mac OS にも…と前項で説明しましたが、実は San Francisco は1種類ではありません(下図参照)。San Francisco には「SF」「SF Companct」という2種類のファミリー構成になっており、Apple Watch には極めて小さな文字サイズになっても視認性が充分に維持できる “SF Compact” を、iOS や Mac OS には逆に大きくなサイズになってもテキストバランスが良い “SF” を割り当てることで合理化を図っています。更にそれぞれが「Text」「Display」というサブファミリーに分けられ、使用目的(実際は20ptを境に切り替え)によって視認性をより高める工夫までされています。

SF_SFC

▲ SF(上)と SF Compact(下)

 

San Francisco フォントについて、大まかな説明をしてきましたが、なんとなくご理解いただけたでしょうか。
このほかにも「:(コロン)」を数字で挟むと自動的に中央表示に切り替わったりと、AppleのOS側にも細かな独自のプログラムが施されていたりするそうです。
一般的には「好き」か「嫌いか」とか「見やすい」か「見にくい」かで判断されてしまうフォントですが、皆さん(ユーザー)の好き嫌いに関係なく暫くの間はこの San Francisco フォントでApple製品は統一され継続されていくことでしょう。

何気なくiPhoneの時計に目をやる瞬間、Macでファインダーから目的のフォルダに辿り着くまでの数秒、Apple Watch に目をやるひととき…
この”フォントのお話” を思い出していただければ幸いです。

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